イヤホンの開発
campino audioは、大手メーカーのように過去の資産が十分に無いため、まず、ハイレゾイヤホン(CP-IE300H)の開発を始めるにあたり、多くのメーカーのイヤホンを試聴し、自分たちの理想に近い音を出しているもの見つけるところから始めました。そして、その理想の音を構成する要素を分析するところから着手しました。音作りの初めは、まずオーディオ帯域の音が全体域にわたって十分に再生できているか測定し確認するところからスタートします。音質の追及以前に、まずはどの周波数の音もしっかり再生する質の良い素材、つまりドライバーユニットや構造を模索することから開始したのです。我々の理想は、低音から高音までバランスよくクリアに鳴らすことができ、音楽が持っているボーカルや各楽器の音色を繊細に表現するイヤホンです。その理想の音を目指して、ドライバー選び、音響設計、デザインを進めていきました。
ドライバー
ドライバーは、8㎜のダイナミック型を採用しました。ダイナミック型は、流行のBA(バランスドアーマチュア)型と違い、1つのドライバーですべての帯域の音を鳴らすことができるので、まとまった音になりやすい特徴がある一方で、音質調整の自由度が少ないという難しさがあります。ドライバーも多くの試作を行い、たとえば、ドライバーのボイスコイルの芯線の太さもいくつも試しました。最終的に0.045㎜のCCAW(CCAWは、通常の銅線と比べ軽量で、ボイスコイルを繊細に振動させることができ、高い音の再現性を実現しています。)を採用しました。女性ボーカルがとても良い音になったことが決め手でした。ドライバーのコーティングは、ベリリウムや炭素系(DLC)のコーティングなどもありますが、音質とコストのバランスから、チタンコーティングを選択しました。また、このドライバーは、出力音圧レベルを低めに抑え(94dB/mW)、それにより各帯域のレスポンスの良さと、低域の音からハイレゾの高域の音まで広帯域の高音質再生を実現しています。
構造・素材
イヤホンにおいてチャンバー(空間)は、容積が最も重要です。しかし必ずしも大きければ良いというものでは無く、大きくなると高音では悪い影響が出るため、音響的に最適なサイズを探しました。次に、バスレフポートの径とドライバーからの距離、チャンバーの奥行きやノズルの長さをいくつも試作して、微調整を繰り返し、理想とする音に近づけていきました。数多くの試作を重ねた結果、チャンバーは、ドライバーの後側の容積が810㎣、前が76㎣、バフレスポートは、ドライバーからの距離が2.2㎜、径は0.6㎜になりました。ハウジングの素材は、アルミニウムを使用しています。高価格なイヤホンであれば、もっと高級な素材を使うことも可能ですが、この価格帯のイヤホンとしては、音質に関係する剛性と質感の点で、アルミニウムは理想的な素材と言えます。
デザイン
イヤホンに求められる音質とフィット感を追求した結果、「壺」をモチーフにした「ヴェイスデザイン」に到達。美しい曲面で構成され、軽量で剛性の高いアルミニウム削り出しのハウジングは、不要な振動とノイズを抑えています。本体に丸みを持たせることにより、耳への違和感を和らげ、ノズルの長さを調整することにより、フィット感を実現しました。小さな筐体でも、美しい響きのためのチャンバーを確保し、自然で奥行きのある低音を実現しています。そして、内部構造は、平行する面を無くし、定在波による音への悪影響を抑えています。金型を使わずに削り出しで生産するため、ギリギリまで細かい調整が可能で妥協なくより理想に近づけられました。
ケーブル
イヤホンの性能を最大限引き出すために、4芯構成のケーブルに純度99.99%以上の高純度無酸素銅(4N OFC)を採用。スマートフォンで使うということで、リモコン、マイクをつけるという構想もありましたが、音を良くするためにリモコンとマイクの採用は見送りました。その代りとして、ケーブルは4芯独立構成ができるようになり、信号のクロストーク(混線)を低減し、リモコン分のコストを高級な芯線に使うことができました。 ケーブルも、絡まりにくく、タッチノイズの少ないセレーション加工のものを採用し音楽に集中できるよう配慮しています。
ハイレゾ
このイヤホンは、40kHz付近でも、十分な音圧を確保していて、真面目にハイレゾと言えるイヤホンになっています。そのようなイヤホンは、大手メーカーでも一部しか無く、他社製品でしたら15,000円~20,000円クラスのものになっています。超高域は精確な計測が難しく、推測になりますが、70kHzくらいまでは再生帯域が延びています。広帯域の周波数を再生できるということは、可聴帯域内での繊細で解像度の高い音の再生できるということですので、最終的に出来上がった製品の周波数特性は理想的な形をしており、ハイレゾといえる高音までちゃんと出した上で、バランスの良い音にまとめることができました。このイヤホンは、基本に忠実に開発しました。イヤホンとしては、とてもベーシックな作りで、飛び抜けた個性があるわけではありません。ただし、ベーシックであるがゆえに誤魔化しが効きません。その点では、買っていただいたすべての方に値段以上の音と納得いただける、campino audioの実力を知っていただける製品に仕上がっています。
パッケージ
パッケージは、商品を安全にお客さまにお届けし、また、包みを開ける時のワクワクを演出する重要なものです。同時に、開けてしまえば、不要になり、過剰な包装は地球環境に負担をかけるものでもあります。campino audioでは、高級なものは、高級なパッケージにという常識から離れ、campino audioではパッケージを再定義しました。パッケージに必要な要素を絞り、デザインはシンプルに過剰な演出を排除しました。素材は、環境に優しいダンボールを採用しながら、プレゼントにできるクオリティを目指しています。